肺炎で死亡(2)
しばらくは首の中のデスモイド(の切り残し)の大きさには変化はなかった
放射線治療をやってみることになった。
この間に試そうと考えたんだろう
それが間違いだった。
1回目の放射線照射を受けに行った父は
その後首が真っ赤にただれた
酷く痛いらしい。
僕たちは放射線治療がどんなものかもよくわかっていないから
これもなにかの効能なのかと信じる。
でも相当ひどい状態になってしまったらしく
放射線治療は1回切りで取りやめとなった。
放射線治療の影響だろうか、
いやそうだと思う、
切り残しのデスモイドが成長を始めた。
ならば有明が言うように2度目の手術を。。。
:
県立大学病院には「手術は一度まで」の壁がまだあったらしい
「窒息の恐れがあるから首に穴を開けて気道確保しましょう」
そんなことを提案されたらしい
:
このころ僕は忙しく密に連絡をとれていなかった
既に首からは透明なプラスチックの忍者の竹筒が生えていた。
ああ有明に行っていれば
その後またしばらく何もない状態が続く
何もない
とは
定期的に写真撮影して
1日12回ものモルヒネを飲んで
地獄の痛みに耐え続けることを言う。
気道パイプは痰がたまる。
吸入器でズズズっと吸ってあげる必要がある。
手術直後は全話せなくなった父だが
声帯がなくなったわけじゃないので
じきに体の使い方を覚えて小さい声で話せるようになった。
絶え間ない激痛
目に見えて変化する体をみつめる父
定期的に「いっそ。。」と泣いてしまう母
前向きにする方法はないだろうか
有明にいこうと思える方法はないだろうか
ガン保険は
「悪性腫瘍にも良性腫瘍にも使えます」
「デスモイドは悪性とも良性とも認定されていません」
くそが、ガン保険なんてもう絶対に契約しない!
高額医療費補助があるがそれでも毎月10万円は非常にきつい。
父は首に穴を開けたことで障害者認定を持ったが
級が低いので全然足りない。
昭和の偏見の多い世代だから、ただただ自分が障害者になってしまった事を嘆くのみ
人生最後にひとつ偏見が減らせて良かったねと心の中で酷いことを考える俺。
(続く)